うみそらひとことば

みんなの作品と言葉を貼り付けます! 私の写真も載せます!

金がきたら  1940.9.21

 

 竹内浩三さんの「金がきたら」を書き込んでみます!

 

   金がきたら

 

金がきたら

ゲタを買おう

そう人のゲタばかり かりてはいられまい

 

金がきたら

花ビンを買おう

部屋のソウジもして 気持よくしよう

 

金がきたら

ヤカンを買おう

いくらお茶があっても 水茶はこまる

 

金がきたら

バスを買おう

すこし高いが 買わぬわけにもいくまい

 

金がきたら

レコード入れを買おう

いつ踏んで わってしまうかわからない

 

金がきたら

金がきたら

ボクは借金をはらわねばならない

すると 又 なにもかもなくなる

 

そしたら又借金をしよう

そして 本や 映画や うどんや スシや バットに使おう

金は天下のまわりもんじゃ

本がふえたから もう一つ本箱を買おうか

 

 お金のない生活を送っていたんですね。質屋さんに自分の衣服を持って行って、それでお金を借りていたらしい。浩三さんは、バイトなんかしていないのでしょうね。本を読み、大学の勉強をしていた。

 

 ゲタ(はきもの、学生の必須アイテムの靴みたいなものですね)も、ヤカンも、花びんも持っていなかったみたいです。東京での下宿暮らしは、お金さえあれば、何とかなったんでしょう。

 

 バスを買おうなんて、それはギャグのつもりでしょうか。自転車はなかったんですね。高円寺から神田あたりまで、中央線は走ってなかったんでしょうか。バスで行き帰りしていたのか。

 

 レコードも買い、本も次から次と買い、部屋は散らかりまくっていた。掃除しなきゃとは思うものの、それもできていなかった。

 

 金ができたとしても、人間は、そんなに劇的に生活を変えることなんてできません。いつもと同じのだらしない生活です。お金がすべてを解決するわけではないのです。

 

 それよりも、単純なところから、毎日掃除するとか、整理整頓するとか、本をすべて本箱に入れるとか、要らない本は売ってしまうとか、やれたら、もう少し片づくと思うんだけど、それも簡単にはできなくて、ついつい、今の生活を変えるのは、実家からのお金なのだ、なんて理屈をつけてしまう。

 

 そうじゃない! というのは、私は知っています。でも、若い人には、それがわかりません。仕方なく私も、お金は要らないけど、自分はもう少し違う生活を送りたいな、なんて思ってしまうんです。